WORKS
Hさんのスギの椅子
Cedar Chair
「すぎのいす」
Hさんと初めてお会いしたのは、 キッチンの食器収納棚のご相談で工房に来てくださった時でした。
打合せのテーブルにご案内したとき、 奥様がふと一脚の椅子に座られて、 「これ、軽いのね。」と、ぽつり。
その椅子は、杉でつくった試作の椅子。
販売用ではなく、構造やデザインを確かめるためのもので、 最終的には栗で仕上げる予定の椅子でした。
そして、「座り心地がやさしくて、落ち着くわ。」
そう言ってくださったのが、とても印象的でした。
そこからは、収納の話より椅子の話。
何度も立ったり座ったりしながら、 杉の椅子の軽さとやわらかさを確かめているようでした。
奥様はもともと木が好きで、 ずっと木の椅子を暮らしに取り入れたかったそうです。 でも、手に痛みを感じる日が増えて、 「木の椅子は重いから」と、あきらめていたとのこと。
そんな中で出会った、軽くてやさしい杉の椅子。
「これなら使えるかも。」 と、言って下さったその言葉が、なんだかとてもうれしくて。
ただ、杉は椅子に使うにはとても勇気のいる素材です。 やわらかくて傷がつきやすいし、強度の面でも不安があります。 だから、杉の特性やデメリットを何度もお伝えしました。 「こういうこともありますよ」「こういうメンテナンスが必要ですよ」と。
それでも奥様が、「これがいいの。」と、 にこにこしながら、言ってくださいました。
そこまで言っていただけたなら、もう作るしかない。 そう思って、杉の椅子を製作させていただきました。


私たちがお届けする木の道具は、どんな樹種でも、
暮らしの中で手をかけながら、少しずつ関係を深めていけるような存在であってほしいと思っています。
メンテナンスも含めて長く使っていただけるようにと、いつも考えながら製作しています。
杉の椅子は、やわらかさゆえに手をかけてあげることが大切で、
だからこそ、使い手さんとの関係性も深まり、愛着が育まれていくような気がしています。
そんな気持ちで “すぎのいす” をお届けすることになりました。
家具制作&一級建築士事務所
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